コーヒー植物学3『コーヒーは日陰が好き/シェード栽培について』

コーヒーノキシェード栽培 コーヒーの雑学
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植物としてのコーヒーについて考察するこのシリーズだいぶ間が空いてしまいましたが、今回も主にコーヒーチェリーを実らせるコーヒーノキの特徴的なところを紹介します。

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コーヒーノキは陰生植物

コーヒーノキは赤道を中心としたコーヒーベルトと呼ばれる一帯の気温が高くなる太陽が燦々と降り注ぐイメージの地域で栽培されますが意外にも直射日光にさらされるのを好みません。

遮るものが何もない完全日照の2割程度で光合成は頭打ちになります。

ほどほどの日光で十分なんです。

コーヒーノキはそもそもが他の高い木の陰で育つ

陰生植物

であり弱い日照で生育に必要な光合成ができる植物です。

また幼木とある程度成長した木でも耐陰性に違いがあります。

幼木の方が耐陰性が強いですが、ある程度成長すると幼木時より日照を必要とするようになります。

極端ではなくあくまでほどほどのいい具合の日光が必要な植物なんですね。

コーヒーノキの野生種は原生林では背の高い樹と下草の間の生態的地位を占める、樹高4〜6mの低木として育ちます。

そして日照が影響するものに発芽抑制があります。植物の多くは日当たりの良い方が発芽しやすいが、コーヒーは強い光で発芽抑制される珍しい性質のため日陰の方が生えやすくなっています。こうした性質を獲得しながらコーヒーノキは原生林に適応して太古の昔から生き残ってきました。

コーヒーノキシェード栽培

野生のコーヒーノキ

余談ですがコーヒーノキの野生種はエチオピア西南部から南スーダンにかけての原生林に今でも自生しています。この野生種から取られたコーヒー豆はフォレストコーヒーと呼ばれていますがJICAの支援プロジェクトで正式に商品化までされていてアフリカ輸入専門店のアフリカンスクエアーさんのサイトで入手することができます。

エチオピアの森に自生するコーヒー ベレテ・ゲラ

JJC店主ワダ
JJC店主ワダ

どんな味なんでしょうか、生育に人の手が入っていない野生種。
ぜひ試してみたいですね。

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シェード栽培

こうした日陰が好きな陰生植物としての特徴を活かしてアカシアやバナナなど背の高い樹(シェードツリー)を植え、その木陰にコーヒーノキを植えるシェード栽培は中南米の一部の生産国でよく行われています。

メリット

原生林を模した環境で過度の気温上昇や葉の葉焼けを防ぎ高品質なコーヒーができるというということです。

さらに農園の植生の多様さが昆虫や鳥などの生態系を維持、環境や遺伝的多様性の維持にも有効で、コーヒー農園の病害虫も減り、非常にエコロジーなんです。

実際にコーヒー農園の中には原生的な自然環境を保全したエコツーリズム農園として観光農園としてのアピールもおこなっているところもあります。

デメリット

一方でシェード栽培は日当たりが減って花芽の付きが悪くなり、原生林を模す環境下のため収穫では機械を導入しにくくなるため生産性が低下するデメリットがあります。

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シェード栽培は高品質なコーヒーを作るための方法のひとつ

結局のところシェード栽培を導入するかどうかは産地や生産者の諸事情により左右されます。

もともと霧が多くて日照が弱い地域(ジャマイカ、ブラジルの一部、ハワイなど)ではシェードツリーを使わずコーヒーノキ自身に陰をつくらせる密植栽培が行われています。

またそうした密植栽培を行う国の農業試験場からはシェードツリーを使わなくても品質に違いはないというデータも出ています。

シェード栽培はあくまでコーヒーノキの性質を活かした栽培方法のひとつでありどちらの方法が優れているかではなくそれぞれの産地の事情に即した高品質なコーヒーを作るための栽培方法を採用しているということですね。

と今回もなかなかニッチな内容となりましたが、コーヒーが好きになるとこうした植物的なこと栽培方法、と少しずつ気になってくるものだと思います。エコロジーに配慮したシェード栽培をしてるとかしてないとかはコーヒー選びの基準にされる方もいるかもしれませんね。

ではまた次回!

参考:且部幸博「コーヒーの科学」,講談社,2016年2月

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